水芭蕉の花

水芭蕉の花,山形の野草園で撮影

ミズバショウ   串田孫一

深夜独りで、懐中電灯を持ち
水芭蕉の咲く湿地のわきの
小径を歩いて行くと
白い炎が限りなく続いていた。
それは、時々青味を帯び
更に微かな声さえ聞こえて来るように思われた。

そのために幾度か立ち止まって耳を澄ましたが
もちろんその意味の通じるような声ではなかった。
妄想をはっきりと否定するのには
そこに明りをあてるだけで充分だった。
昼の間はただ白く見えている
仏焔苞ぶつえんほうが影を映す壁になり
裏に回って見れば
影をぼんやりと透かす、薄い幕になった。
湿地の匂いも加わって
再び私は幻の世界に招かれ
白い炎はじわじわと集まって来るようだった。





串田孫一・1915年、東京都生まれ・登山家・詩集・随筆・エッセ・多数有り 

ミズバショウ

サトイモ科の多年草、本州中部以北の湿地または水辺、北海道では平地の 湿原に群生している。関東地方では尾瀬沼が有名、5〜6月ごろ20センチくらいの太い花穂が出るが白い大きな仏焔苞ぶつえんほうに 包まれている。苞の方が白い帆のようで美しい。ひとつひとつの花は小さく黄緑色で、花軸に密集している。花が終わると、バショウに 似た大きな葉が伸びてくることからこの名がある。

画像の水芭蕉・山形の野草園で撮影

花言葉・ 夢の世界、神秘的な美