拳の花

こぶし
拳の花   高橋渡

辛夷の花に
人の秘密が宿るので
人の目に
花に凍った声が見え
樹液が見え
花の下
屍は獣の 鳥の
おれがあったり
見えるので
辛夷は永劫の幻影のなる
弥生の土は逝き
卯月のかけらとならず
見開かれた目を
よこぎり
隅位置へ 位置にゆく
少年のおれよ
なだれることば
たんぽぽの根を手に
言葉を見極めようと
少年のおれよ
お前の目で
おれも
辛夷の花を
筧の音する村をすぎて見る



高橋渡・大正11年、兵庫県生まれ・詩集「犬の声」「見据える人」他 

こぶし

モクレン科の落葉高木。日本各地の山に自生し、高さ15〜20メートル になる。3〜4月ごろ、葉より先に10センチほどの白色の6弁花を開く、3片の萼花びらのように見える、名は蕾の形が、赤児の拳を連想 させるからとも、秋に熟す実が拳のようだからとも言われる。



花言葉・ 友愛