少年老い易く学成り難し
一寸の光陰軽んず可からず
未だ覚めず地塘春草の夢
階前の梧葉已に秋聲

意解

少年は年をとり易く、それにひきかえ、学問はなかなか成就しがたい。だから少しの時間でも
軽々しく過ごしてはならない(年月はどんどん経つのに勉強の方はなかなか進まないもので
あるから、時をむだにせず勉強に励んでおかなければならないということ)ちょうど池の堤に
春の草が生えたと楽しんでみているうちに、早くも階前の青桐の葉には、秋の風が忍びよって
くるのであると月日の経つ早さを述べている。

字解

偶成 たまたまできた・・・ということであるが、遇詠・遇吟・愚作などとたまたま、偶然という意味
    特に題をつけないで、詩ができた時のこと。内容が勤学(学問、勉学を勧める)の詩で
    あるのでこれを「勧学」と題している詩集もある。
少年 ここでは若い人ということ、中国では十代の終わりから、二十台の半ば位までを少年と
    いうので、日本で言う「少年」の語感より年が上である。
光陰 光は昼、陰は夜、転じて(歳月)時のこと。
一寸 少しの間
池塘 塘はつつみ(堤)池の堤 土を築き水の流れぬよう防ぐ堤防
春草夢 春先の草花のように若い頃の、将来の希望にみちた心持ちの意味(春草は、
    ここでは若者と解する)
階前 階は階段(中国では高く造られた家の前の左右に階段があり、その前が庭になっている)
梧葉 桐の葉、梧は青桐をいう(中国ではその風雅を賞し庭木として珍重がられている)
秋声 秋風の音(声は音)

偶成

朱熹 作

吟詠 池田菖黎
しょうねん おいやすく がくなりがたし
いっすんの こういん かろんずべからず
いまださめず ちとう しゅんそうのゆめ
かいぜんの ごよう すでにしゅうせい